こんにちは。LuxBike Blog編集部です。

ハーレーダビッドソンの次世代を担うスポーツスターS(Sportster S / RH1250S)。その未来的で筋肉質なスタイリングと、水冷エンジンによる圧倒的なスペックに心を奪われている方は多いはずです。しかし、高揚感のまま購入に踏み切る前に、一度立ち止まって考えてみてください。「ネットで検索すると出てくる『スポーツスターS 後悔』というキーワードは、一体何を意味しているのか?」と。

決して安い買い物ではありません。納車されてから「イメージと違った」「こんなはずじゃなかった」と落ち込む事態は、なんとしても避けたいですよね。実は、このモデルにはその尖ったキャラクターゆえに、オーナーだけが知る「明確な弱点」や「特有の悩み」が存在します。

この記事では、実際のオーナーたちのリアルな声を徹底的に分析し、購入後に後悔しやすいポイントを洗い出しました。しかし、怖がる必要はありません。弱点を知り、事前に対策を講じることで、スポーツスターSは最高の相棒になり得るからです。

  • スポーツスターS特有の「くの字」ライディングポジションによる疲労感
  • 日本の真夏のライディングを困難にする、マフラーからの強烈な排気熱問題
  • 従来の空冷ハーレーとは決定的に異なる、エンジン音や鼓動感のリアル
  • 後悔しないために購入前後に検討すべき、具体的で効果的なカスタム対策

スポーツスターSで後悔する5つの理由

スポーツスターSで後悔する5つの理由
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革命的な水冷エンジン「Revolution Max 1250T」を搭載し、121馬力という圧倒的なパフォーマンスを手に入れたスポーツスターS。しかし、そのあまりにも尖ったキャラクターは、従来の「ハーレーダビッドソン」というブランドに抱くイメージと乖離している部分があります。ここでは、オーナーの皆さんが具体的にどのようなポイントで「後悔」を感じているのか、その深層心理と物理的な要因を掘り下げていきます。

足つきの悪さとフォワードコントロール

足つきの悪さとフォワードコントロール
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スポーツスターSのデザインを決定づけている要素の一つが、足を前方に大きく投げ出す「フォワードコントロール」のスタイルです。横から見た時のシルエットは非常にアグレッシブでかっこいいのですが、実際にまたがってみると、多くの日本人ライダーが違和感を覚えるポイントでもあります。

特に身長175cm以下のライダーにとって、純正のステップ位置はかなり遠くに感じられます。ハンドルも低くフラットな形状をしているため、乗車姿勢は背中を丸めて手足を前に伸ばす、いわゆる「くの字(Clamshell)」のような姿勢を強いられることになります。短時間の試乗や街乗り程度なら「スポーティーで良い」と感じるかもしれませんが、問題は長時間のライディングです。

この姿勢の最大の弊害は、路面からの衝撃を「膝」や「足首」のクッションで吸収できない点にあります。体重のほとんどがシート(お尻)にかかるため、道路のギャップや段差を乗り越えるたびに、突き上げるような衝撃が尾骨から背骨へとダイレクトに伝わります。「ロングツーリングに出かけたら、腰痛が酷くて楽しむどころではなかった」という後悔の声が少なくないのは、この構造的な理由によるものです。

また、スポーツライディングを楽しみたいと思っても、足が前にあるためニーグリップ(膝でタンクを挟む動作)が極めて困難です。下半身で車体をホールドできないため、加速Gやコーナリングの遠心力に耐えるには、どうしても腕の力でハンドルにしがみつくような乗り方にならざるを得ません。これでは、せっかくの高性能エンジンのポテンシャルを活かしきれないばかりか、上半身の疲労も蓄積してしまいます。

ここがポイント

純正のライディングポジションは、大柄な欧米人の体格を基準に設計されている傾向があります。ご自身の身長によっては、ただ乗っているだけで常に腹筋や背筋に緊張を強いられ、純粋にライディングの楽しさを味わえない可能性があります。

右足が熱いマフラーの排気熱問題

「スポーツスターS 後悔」で検索すると、最も多くのオーナーが口を揃えて指摘するのが、このマフラーからの排気熱(ヒート)問題です。フラットトラックレーサー「XR750」の系譜を受け継ぐ右側2本出しのハイマウントマフラーは、このバイクのアイデンティティであり、デザイン上の最大の魅力です。しかし、実用面では大きな代償を払っています。

構造上、高温になるエキゾーストパイプと触媒が、ライダーの右太ももやふくらはぎのすぐ横、数センチの距離を通ることになります。走っている最中は風が抜けるのでまだマシですが、問題は「停車時」です。信号待ちなどで足を地面につくと、内腿がエキゾーストのヒートシールドに接触するかしないかのギリギリの位置に来てしまいます。

特に日本の高温多湿な夏場、渋滞に巻き込まれた時の熱さは想像を絶します。「熱い」というレベルを通り越して、ジーンズ越しでも「低温火傷のリスクを本気で感じるレベル」という悲鳴のような報告が多数上がっています。熱気は下から上がってくるだけでなく、横から直接「輻射熱」として右足を焼き続けます。

このため、「夏場はとてもじゃないけど乗れない」とガレージの肥やしになってしまったり、「おしゃれな薄手のパンツで乗りたいのに、分厚いレザーパンツやチャップスを履かないと耐えられない」といったファッション面での制約に不満を感じたりするケースが多いのです。デザイン優先の設計がもたらす、最も深刻なネガティブ要素と言えるでしょう。

注意点

純正状態での夏場の街乗りは、火傷に対する相当な覚悟と対策が必要です。半ズボンや薄手のパンツでの乗車は自殺行為に等しく、絶対に避けるべきです。

二人乗りや積載性が皆無な設計

二人乗りや積載性が皆無な設計
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スポーツスターSは、その名の通り「スポーツ」性能と「スタイル」に特化したバイクです。開発段階から、実用性や快適性といった要素は意図的に切り捨てられている節があります。その最たる例が、積載能力とタンデム(二人乗り)適性の欠如です。

まず、この車両は基本的にはシングルシート仕様で納車されることが多く、タンデムを楽しむためにはオプションのピリオンシートやパッセンジャーペグを追加購入する必要があります。しかし、仮にタンデム仕様にしたとしても、快適なデートツーリングができるとは限りません。

後部座席は非常に小さくクッション性も限定的です。さらに深刻なのは、ここでも「熱問題」です。パッセンジャー(同乗者)の足元、特に右足のすぐ近くには灼熱のマフラーが存在します。純正の状態では同乗者を熱から守るためのガードが不十分であり、うっかり足が触れてしまえば火傷は免れません。「彼女や奥さんを後ろに乗せて、かっこよくツーリングに行きたい」という夢を描いて購入したものの、一度乗せただけで「熱くて怖い」「お尻が痛い」と拒絶され、結局孤独なソロツーリング専用機になってしまった……という悲しいエピソードも耳にします。

積載性に関しても同様です。右側にアップマフラーがあるため、一般的な振り分けバッグ(サドルバッグ)を装着することが困難です。左側専用のバッグも販売されていますが容量は限られており、車体のスリムなデザインを崩したくないという心理も働きます。結果として、重い荷物を背負ってリュックサックで移動するか、積載を諦めるかという二択を迫られることになり、一泊以上のツーリングでは不便さを痛感することになります。

マフラー音と鼓動感の不足

「ハーレーダビッドソン」というブランドに対して、空冷Vツインエンジンの「ドコドコ」という腹に響く鼓動感や、「三拍子」と呼ばれる独特なアイドリング音を期待している方は多いでしょう。しかし、スポーツスターSに対してその期待を抱いたまま購入すると、納車日に大きな肩透かしを食らうことになります。

搭載される「Revolution Max 1250T」エンジンは、水冷化され、可変バルブタイミング機構を備えた超高性能ユニットです。121馬力を叩き出し、レッドゾーンまでスムーズに吹け上がるフィーリングは、まさにスポーツバイクそのもの。しかし、その代償として、ハーレー特有の機械的なノイズや荒々しい振動は、バランサーによって徹底的に抑制されています。

オーナーの中には、この洗練されたエンジンフィールを「音が静かすぎて掃除機のようだ」「あまりにも優等生すぎて、ハーレーに乗っているという実感が湧かない」と表現する人もいます。もちろん、「不快な振動がない」ことは工業製品として進化している証であり、長距離移動での疲労軽減には役立ちます。しかし、「不便さや荒々しさも含めてハーレーの味」と捉える純粋主義者にとっては、そのスムーズさが逆に「情緒がない」「無機質だ」と感じられ、所有満足度を下げる要因になってしまうのです。

故障リスクと電子制御のトラブル

スポーツスターSは、コーナリングABSやトラクションコントロール、走行モード切替など、最新の電子制御デバイスが満載されています。これらは安全性を高める素晴らしい機能ですが、同時に「ブラックボックス化」したトラブルの温床にもなり得ます。

特に初期モデル(2021年〜2022年頃)や一部の個体では、納車直後から「エンジンチェックランプ」が点灯したり、謎のエラーコードが頻発したりする事例が報告されています。ディーラーに持ち込んで診断機にかけても明確な機械的トラブルが見つからず、「センサーの誤検知」や「ソフトウェアのバグ」として、とりあえずエラーコードをリセットして様子を見る……という対応になることもあります。

また、このバイクの電気システムはバッテリーの電圧に対して非常にシビアです。長期間乗らなかったり、冬場に電圧が少し低下したりしただけで、エンジンは始動できてもシステムエラーが表示されることがあります。高額なプレミアムバイクであるにもかかわらず、「いつチェックランプが点灯するか」とビクビクしながら乗らなければならないストレスは、オーナーにとって小さくない精神的負担となります。

リコール情報について

過去にはアッパートリプルクランプ(トップブリッジ)に亀裂が入る恐れがあるとして、国土交通省にリコールが届け出られた事例もあります。中古車を検討する場合は、これらの対策が実施済みかどうかを必ず販売店で確認してください。(出典:国土交通省『リコールの届出について(ハーレーダビッドソン スポーツスターS)』

スポーツスターSの購入で後悔しないために

スポーツスターSの購入で後悔しないために
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ここまで、あえて厳しい現実やネガティブな要素を列挙してきました。読んでいて不安になった方もいるかもしれません。しかし、誤解しないでいただきたいのは、スポーツスターSは決して「悪いバイク」ではないということです。むしろ、その圧倒的な加速力、唯一無二の存在感を放つデザイン、そして所有欲を満たす質感は、他のどのメーカーのバイクでも代えがたい魅力を持っています。

重要なのは、「自分の理想」と「バイクの現実」のギャップを埋めることです。「スポーツスターSで後悔したくない」と考えるなら、車両の特性を正しく理解した上で、自分好みに「仕上げていく」覚悟と、そのための予算を持つことが重要です。ここでは、多くの先輩オーナーが実践している、具体的な解決策を紹介します。

ミッドコントロールへのカスタム

前述した「ポジションが遠い」「腰が痛い」「操作しにくい」という問題を一発で解決する特効薬が存在します。それが、ステップ位置を手前に移動させる「ミッドコントロールキット」への換装です。

純正のフォワードコントロールからミッドコントロールに変更することで、足の位置が体のほぼ真下に来るようになります。これにより、物理的にハンドルまでの距離が近くなるだけでなく、しっかりと下半身で車体をホールド(ニーグリップ)できるようになります。段差を乗り越える際も、とっさに足で踏ん張って膝をサスペンションのように使えるため、腰への衝撃を劇的に逃がすことが可能です。

実際にこのカスタムを施したユーザーからは、「全く別の乗りやすいバイクに生まれ変わった」「最初からこの仕様にしておくべきだった」と絶賛する声が後を絶ちません。パーツ代と工賃で十数万円〜の費用はかかりますが、長く快適に乗り続けたいのであれば、納車と同時に施工しても良いくらいの「必須級カスタム」と言えるでしょう。

必須となるヒートガードでの熱対策

必須となるヒートガードでの熱対策
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日本の夏を乗り切るためには、熱さを我慢する精神論ではなく、物理的な熱対策を講じることが不可欠です。幸いなことに、この問題に悩むユーザーが多いため、サードパーティメーカーから効果的なアフターパーツが多数開発されています。

主な対策アイテムと、その効果を以下の表にまとめました。これらを組み合わせることで、熱さを「制御可能なレベル」まで抑え込むことができます。

対策パーツの種類 具体的な機能と効果
カーボンヒートガード 純正の樹脂製ガードを、熱伝導率の低いカーボン製やFRP製に交換、または上から被せるパーツ。表面温度が下がり、万が一触れても火傷しにくくなります。見た目のドレスアップ効果も高いです。
ヒートシールドライナー マフラーカバーの内側に貼り付ける耐熱断熱材。目に見えない部分ですが、エキパイからの輻射熱を元から遮断するため、足への熱気そのものを軽減する効果があります。
サドルシールド フレーム(シート下)に取り付け、エンジン後部から太ももに向かって立ち上る熱風を物理的にブロックする板状のパーツ。信号待ちでの「内腿のジリジリ感」に特に有効です。
パッセンジャー用シールド タンデムステップ付近のエキパイを覆う追加ガード。同乗者の足を火傷から守るためには、必須の安全装備と言えます。

これらのパーツを導入することで、「火傷の恐怖」から解放され、純粋にライディングに集中できるようになります。また、最近では純正マフラーの見た目を活かしつつ、内部構造で排気効率と音質を変える(そして熱も多少マシになる)ようなカスタムも人気です。

燃費の悪さと航続距離の短さ

ツーリングを楽しむ上で、地味ながらボディブローのように効いてくるのが「航続距離」の問題です。スポーツスターSの燃料タンク容量は11.8リットルしかありません。1250ccの大排気量エンジンで、ついついスロットルを開けたくなる楽しい特性も相まって、実燃費はリッターあたり15km〜18km程度になることが多いです。

計算上、満タンからの航続距離は180km前後となりますが、ガス欠の恐怖を考えると、実際には140km〜160km走行した時点で給油ランプを気にし始めることになります。これは、長距離ツーリングにおいてはかなり頻繁な給油ペースです。

「高級車に乗るのに燃費なんて気にするな」という意見もあるでしょう。しかし、マスツーリング(集団走行)において、他のメンバーのバイクがまだ300km走れるのに、自分だけ「すみません、ガソリン入れたいです」と頻繁に申告するのは、意外と気を使うものです。「早めの給油」をルーティン化し、休憩の口実としてポジティブに捉えられるかどうかが、このバイクとストレスなく付き合うコツになります。

空冷モデルと比較検討する重要性

もし、あなたがスポーツスターSに興味を持った理由が、「ハーレーというブランドへの憧れ」や「カスタムカルチャーへの興味」であり、絶対的な速さや最新スペックにはそこまでこだわらないのであれば、一度立ち止まって考えてみてください。もしかすると、あなたの理想は「スポーツスターS」ではなく、生産終了となった「空冷スポーツスター(XL883N アイアンやXL1200X フォーティーエイト)」にあるかもしれません。

空冷モデルは、スペックや機能面ではスポーツスターSに遠く及びません。重いし、遅いし、ブレーキも効きません。しかし、そこには確かに「鉄馬」としての鼓動、エンジンの熱気(良い意味での)、そして金属の塊を操るアナログな喜びが存在します。中古車市場では依然として高値で取引されていますが、「ハーレーらしさ」を最優先するのであれば、空冷モデルの方が購入後の満足度が高い可能性は大いにあります。

流行りや「新型だから」という理由だけで選ぶのではなく、自分がバイクライフに何を求めているのか(速さなのか、雰囲気なのか、音なのか)を、冷静に自問自答してみることを強くおすすめします。

スポーツスターSで後悔する人の特徴

最後に、これまでの分析を踏まえて、「スポーツスターSを買うと後悔する可能性が高い人」と、逆に「最高の相棒になる人」の特徴をまとめます。もし、以下の「後悔しやすい人」の項目に多く当てはまる場合は、購入を慎重に再検討するか、車両本体価格とは別に30万円〜50万円規模のカスタム予算を準備する必要があるでしょう。

後悔しやすい人の傾向
  • ハーレーに対して「ドコドコとした鼓動感」や「のんびり走る癒やし」だけを求めている人
  • 車両購入後のカスタム予算(ポジション改善や熱対策)を確保しておらず、純正のまま乗りたい人
  • 真夏の都市部や渋滞路を、通勤や移動手段として頻繁に使用する予定の人
  • パートナーとの快適なタンデム(二人乗り)ツーリングをメイン用途に考えている人

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逆に言えば、「最新の水冷エンジンの強烈な加速を味わいたい」「この近未来的なスタイルに一目惚れした」「不便な点はカスタムで自分仕様に変えていくプロセス自体を楽しめる」という割り切りができる方にとっては、スポーツスターSは他にはない刺激と満足感を与えてくれる、唯一無二のマシンとなります。完璧なバイクは存在しませんが、その弱点を知識と愛情(と投資)でカバーできるかどうかが、この現代の「じゃじゃ馬」を乗りこなすための鍵となるでしょう。