こんにちは。LuxBike Blog編集部です。
ハーレーダビッドソンの次世代を担う戦略モデルとして華々しくデビューしたスポーツスターS(Sportster S / RH1250S)。その圧倒的なパフォーマンスに注目が集まる一方で、購入を真剣に検討して検索してみると、「スポーツスターS ダサい」という衝撃的な関連キーワードを目にしてしまい、不安な気持ちになっている方も多いのではないでしょうか。200万円近い金額を支払うわけですから、「買ってから後悔したくない」「みんなからカッコ悪いと思われるのは嫌だ」と考えるのは当然の心理です。
実は、この「ダサい」という辛辣な評価の背景には、従来のデザイン文法との決別や、物理的な機能のミスマッチ、そして空冷時代の「味」との比較など、非常に複雑な要因が絡み合っています。しかし、断言します。そうしたネガティブな要素は、このバイクのポテンシャルの一部に過ぎず、カスタムや対策次第で「世界に一台だけの最強のマシン」へと変貌させるための「伸びしろ」でもあるのです。
- ネット上で「ダサい」と言われてしまう具体的なデザインの不満点
- オーナーになって初めて気づく熱問題やポジションの深刻なデメリット
- 弱点を克服し、誰よりもカッコよく仕上げるための具体的なカスタム手法
- 空冷モデルと比較した中古相場の現状と、賢い買い時の見極め方
スポーツスターSはダサい?不満の理由

ハーレーダビッドソンというブランドには、100年以上の歴史の中で培われてきた「鉄馬」としての確固たるイメージがあります。それゆえに、完全新設計の水冷エンジン「Revolution Max 1250T」を搭載したスポーツスターSが登場したとき、既存のファンや、伝統的なハーレー像を求める層からは戸惑いの声が上がりました。ここでは、なぜ「ダサい」という厳しい評価が下されてしまうのか、その視覚的・心理的、そして機能的な要因を徹底的に深掘りしていきましょう。
純正マフラーの存在感が強すぎる問題

スポーツスターSを見たとき、誰もが最初に視線を奪われるのが、車体右側に高く掲げられた巨大な2-1-2エキゾーストシステムです。このデザインは、ハーレーのレース史に輝くフラットトラックレーサー「XR750」へのオマージュであり、スクランブラースタイルを現代的に解釈したものです。しかし、このマフラーこそが「ダサい」と言われる大きな要因の一つになっています。
最大の理由は、その物理的な「大きさ」と「質感」にあります。現代のバイクは「ユーロ5」などの極めて厳しい排ガス規制をクリアしなければなりません。そのため、マフラー内部には巨大な触媒(キャタライザー)や消音室を設ける必要があり、どうしてもサイレンサー部分が肥大化してしまうのです。かつてのスラッシュカットマフラーのような、細身でシンプルな鉄パイプの美しさを期待していると、スポーツスターSのマフラーは「鈍重な塊」に見えてしまいます。
また、広範囲を覆う樹脂製や金属製のヒートガードが、エキゾーストパイプ本来の曲線美を隠してしまっている点も指摘されています。「太いパイプの集合体のように見えて、スマートさがない」「バイク全体のシルエットに対して、マフラーだけがボテッとしていてバランスが悪い」といった声が多く聞かれるのも事実です。ブロンズカラーの差し色は高級感があるものの、全体の「塊感」が強すぎて、軽快さを損なっていると感じるユーザーが多いようです。
ここがポイント
純正マフラーのデザインは、環境性能と法規制をクリアするための苦肉の策という側面があります。機能としては優秀ですが、視覚的な「重たさ」や「野暮ったさ」が、スタイリングの評価を分ける大きな要因となっています。
リアフェンダーの隙間とデザインの違和感
個人的にリサーチをしていて、最も「ダサい」と指弾されているポイントだと感じるのが、リア周りの処理、特にタイヤとシートカウルの関係性です。スポーツスターSは、スイングアームから伸びるアームにナンバープレートとウインカー、マッドガードを取り付ける「スイングアームマウント(フローティング)方式」を採用しています。
最新のストリートファイターや一部の欧州車ではトレンドのデザインですが、ハーレーダビッドソンのファン層が求める美学とは大きく乖離しています。ハーレーのデザインの魅力の一つは、リアフェンダーがタイヤのアール(曲線)に沿って美しく被さり、車体全体が一つの塊として流れるようなラインを描くところにあります。
しかしスポーツスターSの純正状態では、シートカウルのエッジとリアタイヤの間に、拳がいくつも入るような巨大な空間(隙間)が空いています。この空間が、「スカスカしていて未完成に見える」「リア周りだけデザインが断絶している」「取って付けたようなナンバーホルダーが異物に見える」という厳しい評価につながっています。特に横から見たときのシルエットにおいて、この隙間が車体の一体感を損なっていると感じる人が多く、ここを「修正」することがカスタムの第一歩となるケースが後を絶ちません。
エンジン周りの質感とプラスチック感
「鉄の馬」という言葉に象徴されるように、ハーレーの魅力は金属の質感にあります。特に空冷時代のスポーツスター(XL883/XL1200系)は、深く刻まれた冷却フィン、クロームメッキの輝き、アルミの地肌など、エンジンそのものが工芸品のような美しさを持っていました。対して、スポーツスターSの心臓部であるRevolution Max 1250Tエンジンは水冷ユニットです。
水冷化するということは、エンジン内部に冷却水を循環させるためのウォーターポンプやラジエーター、そしてそれらを繋ぐ無数のゴムホースや配線が必要になることを意味します。これらを剥き出しにするわけにはいかないため、スポーツスターSではエンジンの多くの部分が樹脂製(プラスチック)のカバーで覆われることになりました。
もちろん、軽量化やコストダウン、デザイン的な処理として現代のバイクでは当たり前のことです。しかし、車両価格が約200万円〜というプレミアムクラスのバイクとして見たとき、この「プラスチックの多用」は質感不足と捉えられがちです。オーナーからは「近くで見るとチープなおもちゃっぽさがある」「高級感が足りない」という辛辣な意見も散見されます。MT-09のような日本製スポーツネイキッドであれば許容される樹脂パーツも、ハーレーという文脈においては「本物感の欠如=ダサい」というレッテルにつながってしまうのです。
スポーツスターSの熱対策は必須レベル

「ダサい」という見た目の話以上に、購入者を悩ませ、時には手放す理由にさえなってしまうのが「熱問題」です。これはSEO上の検索ボリュームも非常に多く、スポーツスターSのアキレス腱とも言える設計上の特性です。
前述した通り、スポーツスターSのエキゾーストパイプはアップタイプで、ライダーの右足太ももの内側スレスレを通るレイアウトになっています。エンジンが高い位置にあり、さらに排ガス浄化のために超高温になる触媒(キャタライザー)が足のすぐ近くに配置されているため、走行風が当たらない停車時には、想像を絶する熱気がライダーを襲います。
夏場の渋滞や信号待ちでは、ジーンズ一枚では耐えられないほどの熱さになり、「低温火傷をした」という報告も決して大げさではありません。この熱さは、単に不快なだけでなく、「バイクに乗るのが億劫になる」という心理的なバリアを生み出してしまいます。「カッコつけて乗ろうとしたけど、熱すぎてガニ股になる」「熱さで顔が歪む」というのは、ある意味で最高に「カッコ悪い(ダサい)」状態とも言えます。
注意:日本の夏は特に危険
日本の湿度の高い夏場において、ノーマル状態での市街地走行は「苦行」に近いものがあります。購入と同時に、ヒートガードの強化や、断熱性のあるライディングパンツの準備を強く推奨します。
フォワードコントロールの操作性と足つき
スポーツスターSは標準で「フォワードコントロール」を採用しています。これはステップがエンジンの前方にあるスタイルで、足を前へ投げ出して乗るアメリカン特有のポジションです。しかし、スポーツスターSはハンドル位置が低く、遠い設定になっています。
その結果、ライダーの乗車姿勢は、足を前に出しつつ、上半身は前傾するという「くの字(あるいは貝殻のようなクラムシェルスタイル)」になります。この姿勢には、見た目のカッコよさとは裏腹に、機能的なデメリットが大きく2つあります。
一つ目は「腰への負担」です。足が前に出ているため、路面のギャップ(段差)を乗り越える際に膝で衝撃を吸収することができず、ショックが全て尾てい骨から背骨へダイレクトに伝わります。スポーツスターSのリアサスペンションのストローク量はそれほど長くないため、長時間のツーリングでは腰痛の原因になりかねません。
二つ目は「操作性の欠如」です。Revolution Max 1250Tエンジンは121馬力を発揮し、可変バルブタイミング機構(VVT)も搭載した超高性能ユニットです。本来であれば、積極的に荷重移動をしてコーナーを攻められる性能を持っているのですが、フォワードコントロールではステップを踏み込んでバイクをコントロールすることが困難です。「エンジンはスーパーカーなのに、運転席はリクライニングチェア」のようなチグハグさが、本来の性能を引き出せないもどかしさを生んでいます。
参考データ:エンジンの基本スペック
| エンジン形式 | 水冷60度Vツイン Revolution Max 1250T |
|---|---|
| 排気量 | 1,252cc |
| 最高出力 | 121 HP / 7,500 rpm |
| 最大トルク | 125 Nm / 6,000 rpm |
(出典:ハーレーダビッドソンジャパン公式『Sportster S スペック』)
スポーツスターSのダサい声を消す方法

ここまで、なぜ「ダサい」と言われるのか、そのネガティブな要素を包み隠さず解説してきました。しかし、ここからが本題であり、スポーツスターSの真骨頂です。このバイクは、ノーマル状態が完成形ではなく、あくまで「素材」です。世界中のカスタムビルダーやパーツメーカーが、このバイクの弱点を補い、長所を伸ばす素晴らしいパーツを次々と開発しています。「ノーマルが気に入らないなら、自分好みに変えればいい」。そのための具体的なメソッドを紹介します。
ミッドコントロールキットで弱点を克服

スポーツスターSを購入した多くの日本人ライダーが、納車と同時、あるいは直後に導入するのが「ミッドコントロールキット」です。これは、前方にあったステップ位置をエンジンの横あたり、つまりライダーの真下に近い位置まで移動させるカスタムパーツです。キジマ(Kijima)などの国内メーカーや、純正オプションからもリリースされています。
ミッドコントロールに変更するメリットは計り知れません。まず、足の位置が自然になることで、ニーグリップ(膝でタンクを挟む動作)がしやすくなり、バイクとの一体感が劇的に向上します。コーナーの手前でしっかりとステップを踏ん張り、体重移動でバイクを寝かし込むという、スポーツバイク本来の操り方が可能になるのです。
さらに、路面の衝撃が来た瞬間に足で踏ん張ってショックを逃がせるようになるため、腰への負担が大幅に軽減されます。「サスペンションを交換したかと思うくらい乗り心地が良くなった」という感想を持つ人もいるほどです。見た目においても、足が伸びきった状態よりも、膝が曲がった攻撃的なライディングフォームになり、「走れるハーレー」としてのカッコよさが際立ちます。
補足:乗り味の変化
ミッドコントロール化することで、クルーザーというよりは「マッスルネイキッド」や「ストリートファイター」に近い乗り味に変化します。121馬力のエンジンをフルに楽しみたいなら、必須級のカスタムと言えるでしょう。
欧州風カスタムで高級感を演出する
「プラスチック感が安っぽい」「ダサい」という不満を解消するには、デザインの先進国であるヨーロッパのカスタムトレンドを取り入れるのが正解です。特にオーストリアの「Cult Werk(カルトワーク)」や、ドイツの「Thunderbike(サンダーバイク)」といったブランドは、スポーツスターSの質感問題を解決する高品質なパーツを展開しています。
彼らのカスタムスタイルの特徴は、徹底した「マッシブ化」と「ブラックアウト」です。例えば、細く見えてしまうフロントフォークに太いフォークカバーを装着して重厚感を出したり、安っぽい樹脂製のエンジンカバーを、ピアノブラックに塗装されたパーツや、カーボン製のカバーに置き換える手法が取られます。
これにより、車体全体が引き締まり、プラスチック特有のチープさが消え、まるで高級スポーツカーのようなオーラを放つようになります。「大人の高級カスタム」を目指すのであれば、こうした欧州パーツをチェックし、黒を基調としたシックな一台に仕上げるのが近道です。派手なメッキではなく、質感の違いで魅せるカスタムこそが、スポーツスターSには似合います。
フェンダーレスでリア周りをスッキリ
前述した「リア周りの隙間問題」を一発で解決するのが、フェンダーレスキットやショートリアフェンダーの導入です。純正の長く伸びたナンバーステーを取り払い、テールランプの直下やサイド(左側)にナンバープレートを移設することで、リア周りの印象は激変します。
このカスタムの最大の恩恵は、スポーツスターSが履いている超極太のリアタイヤ(180/70R16)が、遮るものなく露わになることです。リアビューの迫力が段違いに増し、まるでドラッグレーサーのような力強いシルエットが完成します。また、シートカウルとタイヤの間の「謎の隙間」も、ショートフェンダーを装着することで視覚的に埋まり、車体全体に凝縮感(塊感)が生まれます。
最近では、ウインカーとテールランプが一体になった極小のLEDライト(ケラーマンなど)を使用することで、保安部品の存在感を極限まで消すスタイルも人気です。「ダサい」と言われていたリア周りが、一転して「最もセクシーなアングル」へと生まれ変わる瞬間です。
中古市場の価格変動と買い時の見極め
最後に、現実的なお金の話、リセールバリューと購入タイミングについて解説します。現在、ハーレーの中古車市場は二極化が進んでいます。2021年に生産終了となった空冷スポーツスター(XL1200X フォーティーエイトやXL883N アイアンなど)は、「もう新車で買えない」という希少性から価格が高騰し、一時は新車価格を大きく上回るプレミア価格で取引されていました。
対照的に、現行モデルであるスポーツスターSの中古相場は、比較的落ち着いた動きを見せています。
| 車種 | 当時の新車価格 | 現在の中古相場傾向 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 空冷スポーツスター (XL1200X等) | 約150万円(最終) | 高騰・プレミア化 | 投資対象に近い。価格が下がりにくい。 |
| スポーツスターS (RH1250S) | 約190万円〜 | 安定・やや下落傾向 | 適正な減価償却。実用車としての相場。 |
これは、スポーツスターSが「投資対象」としてではなく、「乗って楽しむための実用的なバイク」として市場に認識されていることを意味します。初期ロット(2021年〜2022年モデル)で見られた、メーターが低温で動かなくなる不具合や、ECUのトラブルなども、メーカーのリコール対応やアップデートで解消されつつあります。
そのため、現在は「状態の良い中古車を適正価格で手に入れるチャンス」とも言えます。新車価格が高騰している中、カスタムパーツがある程度装着された中古車や、ディーラーの認定中古車を狙うことで、初期費用を抑えつつ、浮いた予算を自分好みのカスタム(熱対策やミッドコンなど)に回すのが、最も賢いスポーツスターSの楽しみ方かもしれません。
スポーツスターSがダサいなんて言わせない
結論として、スポーツスターSは「完成された過去の遺産」ではなく、「乗り手が完成させる未来の野獣」だと私は思います。ノーマルのままでは確かに賛否両論あるデザインや、熱問題、ポジションといった明確な欠点が存在します。ネット上の「ダサい」という声は、そうした一面を切り取った事実に過ぎません。
しかし、それらの欠点はすべて、現代の技術と豊富なアフターマーケットパーツで解決可能です。あえて手のかかる部分を残しているからこそ、カスタムを通じて自分だけの一台を作り上げる喜びがあります。121馬力の暴力的な加速と、最新の電子制御、そして自分好みに仕上げたスタイル。これらが噛み合ったとき、スポーツスターSは誰にも「ダサい」とは言わせない、最高の相棒になるはずです。
もし購入を迷っているなら、ネットの評判だけで判断せず、ぜひディーラーで試乗してみてください。そのエンジンの鼓動と加速感を体感すれば、些細な見た目の不満など吹き飛んでしまうかもしれません。
※本記事で紹介したカスタムやパーツの選定については、保安基準への適合や車検対応の可否を必ずプロショップ等でご確認の上、自己責任で楽しんでください。
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