こんにちは。LuxBike Blog編集部です。

バイク好きの皆様なら一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、Z900RSの中古はなぜ高いのかと不思議に思うことはありませんか。新車価格を大きく超えるプライスタグを見て、この高騰はいつまで続くのか、あるいは今後暴落や値崩れが起きるのではないかと不安を感じている方も多いはずです。特に2025年モデルの動向や2026年に噂されるモデルチェンジ、SEやイエローボールといった特定モデルの買取相場などは、これから購入や売却を考えている私にとっても非常に気になるポイントです。単なる一時的な流行なのか、それとも資産としての価値が定着したのか。この記事では、業界の動向やライダーの心理を深く分析し、その謎を解き明かしていきます。

  • 新車定価を超えて取引される逆転現象の構造的な理由
  • SEモデルや特定のカラーが驚くほどの高値を記録する背景
  • 2026年のモデルチェンジが現在の中古相場に与える影響
  • リセールバリューを維持するための売り時と買い時の見極め

Z900RSの中古はなぜ高いのか?理由を徹底解説

バイクショップの店内で、高値で販売されているZ900RSの中古車と、スマートフォンの画面に表示された高額な価格を見比べる人の手
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発売以来、大ヒットを続けているカワサキのZ900RSですが、中古車サイトを見て「えっ、新車より高いの?」と驚いた経験がある方も多いのではないでしょうか。単なる人気車種という枠を超え、一種の社会現象とも言えるこの状況。なぜこれほどまでにZ900RSの中古相場が高騰しているのか、その構造的な理由を掘り下げてみたいと思います。

新車定価を上回る中古価格の逆転現象

Z900RSのハンドル越しに、スマートフォンの画面で新車価格を上回る中古価格が表示されている様子。
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通常、オートバイや自動車といった工業製品は、ディーラーで納車され、ナンバープレートが付いた瞬間から「中古車」となり、その価値は減価償却曲線に従って下がっていくのが経済の原則です。新車時が最も価値が高く、時間と走行距離に応じて緩やかに、あるいは急激に価値を失っていくのが一般的ですよね。しかし、Z900RSに関してはこの常識が全く通用しない「逆転現象」が、発売から数年が経過した今でも常態化しています。多くのライダーが疑問に思う「なぜ中古の方が高いのか」という問いに対する答えは、単一の理由ではなく、複数の要因が複雑に絡み合っています。

具体的に数字を見てみましょう。例えば、2025年モデルのスタンダード仕様のメーカー希望小売価格(MSRP)は148万5,000円(税込)ですが、大手中古車検索サイト市場を見ると、走行距離が数千キロ進んでいる車両であっても160万円から170万円台で販売されているケースが珍しくありません。これは、新車価格に対しておよそ10%から20%ものプレミアムが上乗せされている状態です。本来であれば諸費用分が目減りするはずの中古車に、新車以上のプライスタグが付けられているのです。消費税や登録諸費用を含めると乗り出し価格はさらに高くなりますが、それでもユーザーはこの価格を受け入れ、購入契約書にハンコを押しています。この現象は、もはや一時的なバブルと呼ぶには期間が長すぎますし、市場全体がこの価格帯を「適正」と認めてしまっている節さえあります。

なぜ、これほどの高値を払ってまで中古車を選ぶのでしょうか。その背景には、「定価」という概念が機能しなくなっている市場の実情があります。ユーザーの間では、「Z900RSは定価で買えないもの」という認識が深く浸透しており、新車価格はあくまでメーカーが設定した基準値に過ぎず、実勢価格は市場の需給バランスによって決定される「時価」であると捉えられているのです。この現象は、ロレックスなどの高級時計や、一部の限定スニーカー市場で見られる動きに非常に近く、オートバイという実用品が「投機的な価値を持つ嗜好品」へと変質していることを示唆しています。「定価で買えたらラッキー」という宝くじのような感覚が、正規ディーラーでの購入体験には付きまとっています。

また、この高値安定は、既存オーナーにとっては「資産価値の保全」という意味で非常にポジティブに働いています。「高く買ったけれど、売るときも高く売れる」という安心感が、さらなる購入意欲を刺激し、相場を下支えする強力な要因となっているのです。「3年乗っても買った値段で売れるなら、実質タダで乗れたようなものだ」という計算が成り立つため、購入への心理的ハードルが下がります。この循環が崩れない限り、逆転現象は当面続くと考えられます。新車を予約しても手に入らない、あるいは手に入るのが数年先になるかもしれないという不確実性が、目の前にある確実な中古車へのプレミアム支払いを正当化させているのです。

ポイント:逆転現象の常態化

Z900RSの場合、中古車価格がメーカー希望小売価格(MSRP)を上回る「逆転現象」が一時的ではなく、数年にわたって常態化しています。

納期未定で新車が買えない需給バランス

中古相場が高騰する最大の直接的要因は、やはり「欲しいのに新車が買えない」という、圧倒的な需給のミスマッチにあります。2018年の発売当初からネオクラシックブームの火付け役として人気は高かったものの、決定打となったのは2020年以降の世界的なパンデミックによるサプライチェーンの混乱でした。半導体不足、コンテナ不足、そしてロックダウンによる工場の稼働停止などが重なり、メーカーの供給能力は著しく制限されました。これはカワサキに限った話ではありませんが、特に人気が集中していたZ900RSへの影響は甚大で、需要に対して供給が全く追いつかない状況が数年間続きました。

当時、そして現在に至るまで、正規取扱店であるカワサキプラザに行っても、Z900RSがショールームに並んでいて「これください」と即決できる状況は皆無に近いと言えます。多くの店舗で「抽選販売」形式が取られたり、あるいは「納期未定のため予約受付停止」という措置が取られたりしてきました。私自身の友人も、新車を注文してから納車まで1年以上待たされた経験がありますし、SNS上では「予約してから2年待った」という声も聞かれます。このように、正規ルートでの入手難易度が極めて高い状態が続いており、新車を買うこと自体が一種のステータスになっている側面もあります。

ライダーという生き物は、一度「バイクに乗りたい」「この車種が欲しい」と熱が高まると、数ヶ月、ましてや1年も先の納車を待てないものです。春のツーリングシーズンや秋の行楽シーズンに合わせて乗り出したいという欲求は、金銭的なコストよりも優先される傾向にあります。その結果、「いつ手に入るかわからない新車」を待つよりも、「目の前にあり、契約すれば来週には乗れる中古車」に対して、新車以上の対価を支払うという行動原理が働きます。これを経済学的には「時間の価値」と呼びますが、Z900RSの購入者はまさに時間を金で買っているわけです。「今の季節を逃したくない」「仲間とのツーリングに間に合わせたい」という切実な思いが、中古車価格を押し上げる原動力となっています。

特に、走行距離が数百キロメートル程度の「新古車」や、屋内で大切に保管されていた「極上車」には、新車の完全な代替品としての需要が集中します。これらの車両は、実質的に「即納できる新車」と同義であり、その「時間的価値」に対して数十万円のプレミア価格が支払われているのです。供給体制が改善しつつある現在でも、過去の膨大なバックオーダーを消化することに追われており、店頭在庫が豊富に並ぶ状況には程遠いため、この需給ギャップによる価格高騰は依然として解消されていません。新車の供給が完全に潤沢になるまでは、この「即納プレミアム」は消滅しないでしょう。

即納の価値

走行距離が数百キロ程度の「新古車」や「極上車」は、実質的に新車の代替品として扱われ、最も高いプレミア価格がつく傾向にあります。

SEやイエローボールの価格高騰理由

Z900RS SE(イエローボール)のバイクの隣で、オーナーがスマートフォンの画面で高騰する買取価格を表示している様子。
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Z900RSシリーズの中でも、特に別格の扱いを受けているのが「SE(イエローボール)」です。標準モデルでも十分に高値安定ですが、SEに関してはもはや「異常値」とも言える価格形成がなされています。2025年モデルのSEの新車価格は170万5,000円ですが、中古車市場では200万円を大きく超え、一時は250万円近くで取引される事例も確認されています。なぜこれほどまでにSEだけが突出して高いのでしょうか。その理由は、単なるスペックの違いを超えた「物語」と「実利」の融合にあります。

このモデルが高騰する理由は大きく分けて二つあります。一つは「装備の実用的価値」です。SEには、スウェーデンの名門オーリンズ製のリアサスペンションと、イタリアのブレンボ製フロントブレーキキャリパーが標準装備されています。これらは、アフターパーツとして後から購入・装着しようとすれば、部品代だけで30万円近く、さらに工賃を含めれば40万円近い出費となる高級パーツです。メーカー純正状態でこれらが組み込まれ、かつメーカーのテストライダーによってセッティングも最適化されているSEは、走りにこだわるライダーにとって垂涎の的であり、その価値が価格にダイレクトに反映されています。自分であとからカスタムする手間とコスト、そしてバランス調整の難しさを考えれば、最初からSEを選んだほうが合理的だと考える層が多いのです。

もう一つ、そしてより重要なのが「カラーリングと希少性」です。特に「イエローボール」と呼ばれるカラーリングは、1970年代の名車Z1の伝説的なカラーであり、オールドファンにとって神聖な意味を持ちます。初期Z1を象徴する「火の玉(ファイヤーボール)」と並び称されるこのカラーは、Zファンの魂を揺さぶる特別な意匠なのです。2025年モデルではこのイエローボールのグラフィックや色味に変更が加えられたため、初期のSE(2022〜2024年モデル周辺)のデザインを好む層からの指名買いが殺到しました。「廃盤になったカラー」は、二度と新車で手に入らないという事実が加わることで、コレクターズアイテムとしての側面を帯び始めます。

さらに、大手買取業者が発表する市場調査データなどが、「Z900RS SEがリセールバリューでトップを独走している」という事実を広めたことも大きな要因です。「SEを買っておけば損はしない」「むしろ数年乗っても買った値段以上で売れるかもしれない」という投機的な心理を市場に植え付けました。実需としての「良いバイクに乗りたい」という層と、投機需要としての「資産として持ちたい」という層が重なり合うことで、SEの相場は他のグレードとは一線を画す高みへと押し上げられているのです。このヒートアップした状況は、供給量が劇的に増えない限り、簡単には鎮静化しないでしょう。

2026年モデルチェンジと電子制御化

右側に電子制御化された最新モデルのZ900RSに跨るライダーと、左側に現行モデルのZ900RSに跨るライダーが、それぞれのバイクを見つめている対比画像。
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そして今、市場関係者や熱心なZファンの間で最も熱い視線が注がれているのが、2026年に予定されている大規模なモデルチェンジの噂です。複数の二輪専門メディアや業界情報筋によると、ついにZ900RSにも「電子制御スロットル(ライド・バイ・ワイヤ)」が採用される可能性が極めて高いと言われています。これはZ900RSにとって、2018年の誕生以来最大の技術的転換点となるでしょう。

これまでZ900RSは、アクセルグリップとエンジンのスロットルボディを物理的な金属ワイヤーで直接繋ぐ「機械式スロットル」を採用してきました。アクセルを開けた瞬間の、右手の動きがそのままエンジンに伝わるようなダイレクトな操作感や、吸気音の微細な変化を直感的に感じられる点は、多くのベテランライダーから「Zらしさ」「操る楽しさ」として愛されてきた重要な要素です。Z1の遺伝子を受け継ぐモデルとして、あえてアナログな操作感を残していたとも言えます。しかし、厳格化する環境規制(ユーロ5+など)への対応や、より高度なトラクションコントロール、そして長距離ツーリングを快適にする待望のクルーズコントロール機能を実装するためには、電子制御化は避けて通れない進化の道筋でもあります。

この技術的な転換は、中古車市場にパラダイムシフトをもたらす可能性があります。新型が登場すれば、機能面や安全性、快適性では間違いなく向上しますが、「昔ながらのワイヤー式のフィーリング」を至高とする保守的な層からは、敬遠される可能性があるのです。「電子制御は便利だが、味気ない」「アクセルのツキが人工的だ」「電子部品が増えると自分での整備が難しくなる」といった評価が下された場合、現行モデル(〜2025年モデル)は「最後の機械式Z900RS」として、その価値を再定義されることになります。

オーディオの世界で真空管アンプが愛され続けるように、あるいはポルシェ911において空冷エンジン時代のモデルが水冷化以降のモデルよりも高値で取引されるように、Z900RSにおいても「不便だが味があるアナログな機構」を持つ現行型への評価が、モデルチェンジを機にさらに高まるシナリオは十分に考えられます。この「駆け込み需要」と「再評価」の動きが、現在の中古相場をさらに刺激しており、新型が出る前だからこそ現行型を押さえておこうという動きが活発化しているのです。「アナログ最後」というキーワードは、中古車市場において魔法のような力を持つのです。

カスタム車が高く評価される市場の文化

バイクショップの整備スペースで、カスタムされたZ900RS CAFEが手前にあり、奥では整備士が別のZ900RSを整備している。
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Z900RSの中古市場を語る上で欠かせないのが、独特の「カスタム文化」とそれに対する市場の評価基準です。一般的な中古バイク市場では、ノーマル(純正)状態が最も高く評価され、改造車は「前オーナーの好みが強く反映されすぎている」「耐久性に不安がある」「車検に通るかわからない」「配線加工などが杜撰かもしれない」として、査定額が減額されるケースが少なくありません。しかし、Z900RSに関しては、このセオリーが逆転することが多々あります。

Z900RSは、「素材」としての魅力が高く、購入後に自分好みにカスタムすることを含めて楽しむ車種です。アフターパーツメーカー各社もZ900RS用のパーツ開発には全力を注いでおり、マフラー、バックステップ、外装キット、ホイールなど、膨大な数のパーツがリリースされています。そのため、中古車市場に流通している車両の多くが、何らかのカスタムを施されています。ここで重要なのが、装着されているパーツのブランドと質です。例えば、ヨシムラ、モリワキ、ビート、アールズギア、ストライカーといった、一流メーカーの車検対応マフラーや、高精度のバックステップ、サブフレームなどが装着されている場合、それらのパーツ代の一部、時には半分以上が車両本体価格に上乗せされて評価されます。

購入検討者からすれば、「車両を買ってから自分でマフラーを買って取り付ける」となると、パーツ代で20万円、工賃で数万円という追加出費が必要になります。さらに、人気パーツは納期が数ヶ月かかることも珍しくありません。それならば、「最初から20万円高いけれど、30万円分の高級パーツが付いていて、すぐに乗れる中古車」を買った方が、トータルコストは安く済み、待つ時間も節約できます。この「お得感」が、高額なカスタム済み中古車の成約を後押ししているのです。特にフルエキゾーストマフラーや高級サスペンション(オーリンズやナイトロン)、鍛造ホイール(ゲイルスピードなど)への換装は、車両価値を大きく高める要因となります。

また、前述したSEモデルについても、市場はこれを「メーカー純正のフルカスタム車」と捉えています。「スタンダードモデルを買って、後からサスとブレーキを変えるより、最初からSEを買った方がコスパが良い」という合理的な判断が、SEの高値安定を正当化しています。このように、Z900RS市場ではカスタムに対するリテラシーが高く、良いパーツが付いている車両は正当に高く評価されるという健全な(しかし価格高騰を招く)文化が根付いています。売る側にとっても、愛情をかけてカスタムした分が評価されるというのは嬉しいポイントですよね。

SEモデルのコスパ論

SEモデルは通常モデルより定価が高いですが、後からオーリンズとブレンボを装着するコスト(約30〜40万円)を考えると、実は「純正フルカスタムとしてお買い得」という認識が市場に浸透しています。

Z900RSの中古はなぜ高い状態が続くのか分析

道路の中央に強くライトアップされたZ900RS。夜間の長時間露光で撮影され、その存在感が市場での永続的な高値安定を示唆している。
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ここまでは高騰の理由を見てきましたが、気になるのは「この高値はいつまで続くの?」という点ですよね。ここからは、最新のデータや市場の動きを見ながら、今後の中古相場について私なりの分析をお話しします。

最新の価格推移と値下がりの兆候

Z900RSの相場は、一本調子で上がり続けているわけではありません。実は2023年の初頭から春にかけて、一時的に相場が軟化し、調整局面に入った時期がありました。これは、半導体不足の緩和に関するニュースが流れ始め、「いよいよ新車の供給が正常化するのではないか」という市場の期待感が先行したためと推測されます。また、冬場の需要減退期とも重なり、一部のデータでは平均取引価格が170万円を下回る水準まで落ち着きを見せました。

しかし、ここからがZ900RSというモデルの底力の凄まじさでした。値下がり傾向は長くは続かず、同年5月から6月にかけて、再び力強い上昇トレンドへと回帰したのです。この「下がってもすぐに戻る」という現象は、株価のチャートで言うところの「押し目買い」のような動きに似ています。価格が少しでも下がれば、「この値段なら買いたい」と虎視眈々と待機していた潜在的な購入層が即座に反応し、需要が供給を吸収してしまうのです。この底堅さが、現在の高値安定を支えています。「150万円台なら安い」という相場観が形成されてしまっているのです。

また、買取相場の下限値が切り上がっている点も見逃せません。事故車や過走行車を除けば、ある程度の状態を保っている車両であれば、どんなに安くても一定以上の価格が付くという岩盤のような支持線が形成されています。2025年現在、新車の供給状況は以前より改善傾向にありますが、それでもSEなどの人気グレードは依然として入手困難であり、全体としての相場は高止まりを続けています。この回復力の強さは、Z900RSに対する市場の信頼がいかに厚いかを物語っています。

さらに最新の2025年後半のデータを見ても、大きな下落トレンドは確認できません。むしろ、次期モデルへの切り替え時期が迫るにつれて、現行モデルへの駆け込み需要が発生しており、微増傾向すら見られます。このことから、少なくとも短期的には大幅な値下がりは期待しにくい状況と言えるでしょう。供給が増えても、それを飲み込むだけの需要の深さがZ900RSにはあるのです。

今後の中古相場で値崩れや暴落はあるか

円安やグローバルな需要による暴落からの保護を象徴するように、厳重なセキュリティを備えたガレージに駐車されているZ900RS。
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これから購入する方にとって最大の懸念材料は、「買った直後に相場が暴落すること」でしょう。しかし、現状の市場構造とマクロ経済的な要因を分析する限り、Z900RSの相場が短期間で急激に崩壊するリスクは低いと私は考えています。もちろん、相場は生き物ですので絶対はありませんが、暴落しにくい構造的な理由がいくつか存在します。

第一に、新車価格自体の上昇です。原材料費の高騰、物流コストの増加、そして円安の影響を受け、カワサキは毎年のように車両本体価格の改定(値上げ)を行っています。2025年モデルですでにスタンダードが約148万円、SEが約170万円となっていますが、次期モデルではさらなる値上げが確実視されています。新車の定価が上がれば、相対的に中古車の「割安感」が増すため、中古相場全体が底上げされる効果があります。つまり、新車が高くなることが、中古車の価格崩壊を防ぐアンカーの役割を果たしているのです。もし新型が180万円になれば、160万円の中古車は「安い」と感じられるようになります。

第二に、円安を背景とした海外輸出需要の存在です。Z900RSは日本国内だけでなく、欧州や北米、そしてアジア圏でも極めて高い人気を誇っています。円安が進行している現在、海外のバイヤーにとって日本の中古車は「割安で高品質な商品」となります。もし国内での需要が落ち込んだとしても、海外からの買い付けが入り、車両が国外へ流出することで国内流通量が調整されるため、価格の大幅な下落が食い止められる構造になっています。これは国産スポーツカー(日産GT-Rやトヨタスープラなど)が高騰したメカニズムと同じで、グローバルな需要が国内相場を下支えしているのです。

このように、インフレーションとグローバルな需給バランスがセーフティネットとして機能しているため、「ある日突然、半値になる」といったようなドラスティックな暴落は考えにくいのが現状です。ただし、世界経済のリセッション(景気後退)などの外部ショックがあれば話は別ですが、Z900RS単体の要因で暴落する可能性は低いと見て良いでしょう。むしろ、ガソリン車への規制が強化される中で、大排気量4気筒エンジンの価値は上がり続ける可能性すらあります。

注意点:市場の変動リスク

あくまで現状の分析であり、世界経済の急変やメーカーの大増産などがあれば相場が変動する可能性はゼロではありません。購入や売却の判断は慎重に行いましょう。

資産価値を支えるリセールバリューの強さ

非常に綺麗に手入れされたZ900RSが美術品のように展示台に置かれ、誇らしげな様子の日本人オーナーがそれを見上げている様子。資産としての価値を強調。
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「バイクは消耗品であり、贅沢品である」という従来の常識を覆し、Z900RSは「資産」としての側面を強く持ち始めています。これを客観的に裏付けるのが、リセールバリュー(再販価値)の高さです。リセールバリューとは、購入した金額に対して売却時にどれだけの金額が戻ってくるかを示す指標ですが、Z900RSシリーズはこの分野において圧倒的な強さを誇っています。所有している期間のコスト(減価償却費)が極めて低い、あるいはプラスになる稀有な車両です。

特に競合車種との比較において、その特異性は際立っています。例えば、同じくリセールが高いとされるホンダの「X-ADV」や「CB1300SF」といったモデルも優秀ですが、Z900RSはそれらを抑えてランキングの首位を奪取する実力を持っています。他のバイクが「機能性」や「利便性」で評価されているのに対し、Z900RSはそれに加えて「Zというブランドの歴史的背景」「美しいスタイリング」「空冷Z1へのノスタルジー」といった、年数が経過しても色褪せにくい「情緒的価値」で評価されています。機能スペックだけの競争であれば最新型には敵いませんが、情緒的価値は時間の経過とともにむしろ熟成されます。

機能は技術の進歩と共に陳腐化しますが、歴史や情緒的価値は時間が経つほどに熟成され、輝きを増すものです。この「腐らない価値」が根底にあるため、オーナーは「高い金額を出して買っても、手放す時も高く売れるから、実質的な所有コストは安い」と考えることができます。この心理的な安全装置が購買意欲を支え、結果として高い相場を維持する好循環を生み出しているのです。「乗って楽しんだ後、ほとんど値下がりせずに売れた」という体験談がSNS等で拡散されることも、この傾向を強めています。

実際に、株式会社バイク王&カンパニーが発表した最新のデータでも、その傾向は顕著に表れています。以下のリンク先にある調査結果は、Z900RSがいかに市場で特別な地位を築いているかを示す強力な証拠です。

(出典:株式会社バイク王&カンパニー『リセール・プライス』ランキング

機械式スロットル最終型の希少性と将来性

先ほど「2026年の電子制御化」について触れましたが、このトピックは中古車の将来性を占う上で非常に重要です。もし新型がデジタル化された場合、現行モデル(〜2025年)は、「最後の機械式スロットル搭載車」として、単なる旧型車以上の意味を持つことになります。歴史を振り返れば、自動車やバイクの趣味の世界では、「不便だが味があるアナログな機構」が生産終了後に神格化され、価格が高騰する例が枚挙に暇がありません。

最も有名な例がポルシェ911における「空冷エンジン」でしょう。水冷化され性能が飛躍的に向上した後継モデルが登場した後も、独特の音とフィーリングを持つ空冷時代のモデルは価格が下がるどころか、数倍に跳ね上がりました。バイクでも、キャブレター車がインジェクション車よりも高値で取引されるケースは多く見られます。これは、人間が機械を直接操作しているという「実感」や「対話」を、趣味人が何よりも大切にしているからです。「ワイヤー1本でエンジンと繋がっている感覚」は何物にも代えがたい魅力なのです。

Z900RSの現行モデルが持つ、右手のひねりにリニアに反応するエンジンの鼓動感は、電子制御では完全に再現できない領域にあるかもしれません。電子制御はスムーズで安全ですが、時として「フィルターを通した感覚」になりがちです。もし市場が「2025年モデルまでが『真のZ900RS』である」という評価を下した場合、現行型の中古車は「ネオクラシック」から真の「クラシック」への階段を登り始め、コレクターズアイテムとしての地位を確立する可能性があります。その意味で、現行型を所有することは、将来的なプレミア化への切符を手にしていると言えるかもしれません。

さらに、新型モデルが価格上昇することに伴い、旧型となる現行モデルの手頃感が(高値とはいえ)再評価される可能性もあります。「電子制御はいらないから、少しでも安くZ900RSに乗りたい」という層と、「アナログなフィーリングを残しておきたい」という層の両方からの需要が見込めるため、2026年以降も現行モデルの価値は大きく損なわれないでしょう。むしろ、新型の評判次第では、現行型の相場がさらに跳ね上がるシナリオさえ想定されます。

最適な売り時と高額買取を狙うポイント

最後に、現在Z900RSを所有しており、売却を検討している方へのアドバイスです。結論から言えば、今は間違いなく「歴史的な高値圏」にあり、売却には絶好のタイミングです。しかし、2026年モデルの正式発表が近づき、新型の仕様が明らかになり、流通が安定し始めると、相場が調整局面に入る可能性も否定できません。市場は「不確実性」を嫌うため、新型の詳細が出る前の「期待と不安が入り混じった状態」が、最も相場が過熱しやすいとも言えます。

特に、2025年モデル以前の車両をお持ちの方は、「機械式スロットル最終型」という希少性をアピールポイントにできる今が、一つの売り時かもしれません。買取店側も、Z900RSは回転が早く(すぐに売れる)、利益が見込める商材であるため、在庫確保のために必死です。そのため、一社の査定だけで決めてしまうのは非常にもったいないことです。複数の業者が競合することで、査定額は驚くほど跳ね上がります。

私の経験上、Z900RSのような高額車両は、買取業者によって査定額に20万円、時には30万円以上の差が出ることが珍しくありません。カスタムパーツの評価基準も業者によって異なります。純正パーツが手元にある場合は、それもセットで査定に出すことで評価が上がります。必ず複数の買取専門店や一括査定サービスを利用し、業者同士を競合させることが、最高額を引き出すための鉄則です。特にSEや限定カラーをお持ちの場合は、強気の交渉が可能ですので、安易に妥協せず、愛車の価値を最大限に評価してくれる業者を探すべきです。「他店では〇〇万円と言われました」という一言が、査定額を大きく動かすカードになります。

モデル・グレード 市場での評価傾向 売却時のポイント
Standard (通常版) 高値安定 カスタム内容(マフラー等)もしっかりアピールする
CAFE 堅調・ファン多し 特定の希少色や低走行車はさらにプラス査定の可能性
SE / 50th 超プレミアム 走行距離が少なければ投機的価値も加味される。強気でOK

まとめ:Z900RSの中古はなぜ高いのか

今回は「Z900RSの中古はなぜ高いのか」というテーマで、その背景にある構造的な要因や将来の展望について、かなり踏み込んで解説してきました。結論として、この高騰は一時的なバブルという薄っぺらいものではなく、世界的な供給不足、Zブランドが持つ圧倒的な求心力、そして消えゆくアナログな内燃機関への憧れなどが複雑に絡み合った結果、市場が導き出した必然的な評価だと言えます。

これから購入を検討している方は、目先の価格の高さに躊躇するかもしれませんが、将来的なリセールバリューも含めて「資産」として捉えれば、決して高い買い物ではないかもしれません。手に入れたその日から、憧れのZの世界に浸れる価値はプライスレスです。迷っている間にさらに相場が上がってしまう可能性もゼロではありませんし、人生の時間は限られています。「乗りたい時が買い時」という言葉は、Z900RSのためにあるような言葉かもしれません。

一方で売却を検討している方は、市場が大きな転換点を迎える前の今が、最大のチャンスである可能性が高いです。高値で売却して次のバイクへの資金にするもよし、現金化して他の投資に回すもよし。いずれにせよ、Z900RSが現代のバイクシーンに残したインパクトは計り知れず、その価値は今後も形を変えながら維持されていくのではないでしょうか。この記事が、皆様のバイクライフの決断の一助となれば幸いです。

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最後に

この記事の情報は執筆時点の相場や予測に基づいています。実際の売買にあたっては、最新の市場動向を専門店で確認することをお勧めします。